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(2) シンガポールにおけるワンストップ・サービス

シンガポールでは1981年から「国家電算化計画」や「行政電算化計画」が国家電算化推進委員会や国家コンピュータ庁を中心に進められ、1986年からは「国家IT計画」により官民両部門でのインテリジェント・テクノロジー化が図られてきた。さらに1992年からはシンガポール全土をインテリジェント化する「IT2000」計画が推進され、住民サービスの向上をめざす「ワンストップ・サービス」の実用化が始まっている。

ワンストップ・サービスとは正式には「ワンストップ住所変更報告サービス」といい、住所変更の申告を国家登録庁の窓口へ届け出ると、登録庁経由で申告当日または翌日に関係省庁へ伝達される仕組みである。シンガポールでは国民及び外国人は住所を変更すると28日以内に申告しなければならないが、同時に国家登録法によってIDカードの保持も義務づけられており、申告の際にはこのIDカードの登録内容も変更してもらう。国家登録庁の窓口に届け出るだけで、変更内容は翌朝までに関係省庁に伝達され、個人でそれぞれの窓口を回る必要がない。

「ワンストップ・サービス」の実施にあたって行政ネットワークの果たす役割は大きい。シンガポール政府には、省庁が共通利用するシステムとして公務員の人事情報システムと財政管理システムがあり、他に住民情報、経済活動情報、土地情報の3つのデータベースが構築されている。これらのコンピュータ間を横断的に結ぶネットワークとしてIDネットがあり、省庁の部署相互を結ぶネットワークにID・Eメールがある。住所変更のデータは登録窓口から住民ハブに伝達され、住民ハブから先はIDネットを経由して省庁に届けられる。住所変更はまた、全国に92ある交番からも可能である。警察官がパソコンから警察のオンラインネットワークを介して住民ハブに入力する。後は登録窓口からと同様である。

 

ワンストップ住所変更報告サービスが実施されるまでは、住所変更はコミュニティ・センターに申告し手作業で処理された後、国家登録庁に送付されていたため、届け出からコンピュータ入力まで1週間を要した。

 

表4−5 シンガポール政府における行政内部の情報化

省庁共通システム ・人事情報中央システム
・財務行政管理システム
行無権限のある省庁間で共同利用
するデータベース
・住民ハブ
・法人・団体ハブ
・土地ハブ
AB間を結ぶネットワーク ・IDネット
省庁間電子メール・ID・Eメール

資料出所:小田島 労「行政情報化の推進に向けて」『ESTRELA』1996.8

 

 

 

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